
01.トクベツなひと
なくなった餌の皿を なんか期待して
まだ残ってるかもって まだ味がするかもって
ずっとさ 舐めている猫は
君に会えない日の僕みたいだ
先に出て行った君の 抜け殻がどこか
落ちていないかって まだ君がいるかもって 今も
探してる僕のことを 君はずっと知らないでしょ
窓から差し込む朝日が 君を攫ってしまうまでは
恥ずかしい姿も あられもない声も
僕だけ そう言った
猫撫で声で鳴いてみたって
どうせ頭を撫でるだけだろう
だって僕は所詮 誰にも秘密の トクベツなひと
いつも怯えていたっけ
結び目がどこか ほどけていないかって
まだ大丈夫なんだって
足下ばかり気にしていた僕は
君の涙 気付けなかった
大事なとこは踏み込まぬようにして
誤魔化すように空っぽな愛を語る
お願い神様 罪深き僕らに罰がくだるのなら
物憂げな瞳も 薄いその背中も
いますぐ忘れさせて
ホック外して 心は脱がないで
愛を着せ替えて 僕に手を振るだろう
わかってるよ 所詮 僕は君の 便利なロボット
どうせいつかこうなってたって
大人になれば忘れるよって
言い聞かすほど虚しい
死神よ 今すぐ呪いをかけて
どうかふたりの息の根を止めて
窓から差し込む朝日が
君を攫ってしまうまでは
恥ずかしい姿も あられもない声も
僕だけ そう言った
行かないでって泣いてみたって
どうせ頭を撫でて笑うだけだろう
だって僕は所詮 誰にも秘密の トクベツなひと
でもねたぶん 僕は君のこと 忘れらんないや
君は僕のずっと 特別なひと
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2.月の恋人
満ち足りてしまった恋のあと
欠けていくばかりの二人
夜の間も照らしてくれたこと
忘れたままで眠りにつくの
記憶の中のふたりは
いつも綺麗で嫌気が差す
君と生きるこの毎日に 何も不満などないけど
僕ら二人手を繋いで いられればそれでよかった
そんな日を思い出してる
満ち足りてしまった生活を
駆けてゆくわ日々の暮らし
旅の無事を祈る愛しさを
気付かぬままで扉開けるの
記録の中のふたりは
いまも綺麗ね 君は笑う
君にとってこの毎日が どうか不満などないように
僕ら二人手を繋いで いられればそれでよかった
君の生きるこの毎日が 何も不安などないように
僕ら二人手を繋いで もうすこしこぼれないように
そんな日を思い描いてる
月は また 満ち 欠けてく
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3.風知らぬひと
我を忘れて追いかけた
生暖かい風に誘われて
名前の知らぬ あのひとを
名前も知らぬ あのひとを
色褪せることなく あゝ朽ちることなく
あなたは風に揺られ わたしを見つめてる
肌に触れて 時を忘れるように
柔らかな匂いを 抱きしめた
花に触れて 棘を忘れるように
醜いところも 愛せるわ
我を忘れて追いかけた
名前も知らぬあのひとよ
渡り鳥のように 落ち着かず
捨て猫のように 寂しげに
わたしを ひとくち啄んで
優しくしては 飛び立つの
抱かれてるときだけ その形を知れたの
せめてその腕くらい 置いていけばいい
羽根を折って 夢を忘れるように
齧りかけの恋を むさぼった
花に触れて 棘を忘れるように
醜いところも 愛せるわ
我を忘れて追いかけた
名前も知らぬあの頃よ
肌に触れて 時を忘れるように
柔らかな匂いを 抱きしめた
花は枯れて 夢は醒めようとも
醜いところも 愛してた
我を忘れて恋をした
名前も知らぬ あのひとよ